恩田陸 ユージニア 結末の考察
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恩田陸さんの作品の中で好きな作品のひとつ「ユージニア」
過去の事件を、関係者の話を追っていくスタイルで物語は進む。
私が最初読んだ時の感想は「え…これで終わりなの?」でした。
なんとなく消化不良を繰り返し、それでも時間を空けて再読してしまう「ユージニア」の魅力を私なりにつづります。
あらすじ
2006年日本推理作家協会賞受賞作
第133回直木賞候補作でもあったようです。恩田さんは、「蜜蜂と遠雷」で直木賞を受賞されていますが、私はユージニアのほうが好みです。
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かつて、地元でも名家とされる青澤家のお祝の席で、大量毒殺事件が発生した。
関係者がほぼ死亡した事件の中で生き残った
- 青澤家の盲目のお嬢様 青澤緋沙子
- 緋沙子と交流のあった少女、事件に関する本を出版することになる 雑賀満喜子
- お手伝いの女性とその娘
- 満喜子の兄弟
の話を核に物語は進む。
家族が皆、毒殺された悲劇の美少女の緋沙子。哀れみの視線が集まる中、当時から、緋沙子を犯人ではないかと疑っていた満喜子と刑事。
事件当日に酒を運んできた怪しい男を追って、捜査が難航する中、突然、容疑者が自殺し、事件を告白する遺書が発見されたことで、事件は終わりを迎える
男の単独犯ではないことも示唆されたが、当時、有効な新事実はでてこなかった。
事件から10年以上たち、満喜子は卒論を書く目的で事件を調べなおす。
その中で、関係者が語ったのはすべて真実なのか、満喜子はどこまで真実を記したのか、果たして事件の真相はー。
感想と考察
ここからはネタバレ要素も含みますので、未読のかたは注意してください。
書き連ねたことはあくまで私見です。
犯人は誰だったのか
明確な答えを出さずして、物語は終わります。ミステリーとしては賛否が分かれるところでしょうか。
実行犯は自殺した青年、あらかじめ準備等で事件を指示したのは緋沙子の母親
緋沙子は母親がしようとしていることを知っていたけれど止めなかった、青年が事件を起こしやすいようにマインドコントロールをした
が真相かなと私は思います。
タイトルのユージニアは、緋沙子と青年の関係「ユージン」からきているのは、作中でも明かされているので、青年に関する緋沙子の関与は大きいと思います。
緋沙子の母親は、緋沙子が盲目になったことを心の奥では受け入れられず、緋沙子の何らかの行いの「罰」と考えていた。だから、罰を懺悔するために緋沙子はお祈りをさせられていたのではいないか。
そこで何が起きたのかはわからないれど、緋沙子に「家族は死んでも仕方ない」というような潜在的な意識を植え付けた。
いびつな親子関係が、事件を引き起こした。
満喜子はなぜ忘れられた祝祭を書いたのか、満喜子の死の真相は
満喜子は当時から緋沙子が犯人だと思っていた。だけれど確証はなかった。
調査をする中で、満喜子の中で緋沙子は犯人という確証に至ったけれど、世間に公表するつもりはなかった。
緋沙子にだけ自分が確証を得たというメッセージを送るために、書籍化を許可した。
のちに刑事が、書籍をもとに証拠の残存の可能性に気が付く場面もありますが、すでに手遅れでした。
同じように緋沙子も証拠の残存の可能性に気が付いたとしたら。
満喜子は、告発するような気持ちはなく、幼いころに抱いた緋沙子への憧憬の念を引き釣り、彼女を守りたいような気持ちもあったのかもしれない。
ラストで満喜子がなくなったが死の真相はぼんやりぼやかされていた。
毒殺へのリードのような気もするけど、熱中症による事故のような死だったのかな。
緋沙子がわざわざ危険を冒して毒殺するような理由もないし。
あなたの考えるラストはなんですか?
これ以外にも、投げられたままの謎はありますよね。
ミニカーとか、古本屋の焼失の真相とか。
10人いたら10人の考察がありそう。
私もまた数年後に読み返したいと思います。